
それはある平和な日曜日の昼の出来事。 中華飯店「栄春軒」で頑張っている鈴とサミル、大輔。 と、ふいにガラガラと扉を開けて入ってきたのは、グリムの童話から生まれた狼の妖怪にして、子持ちフェミニストの浪であった。その傍らには活発そうな女子高生らしき少女もいる。 「いらっしゃいアル……お、浪さんアルか。久しぶりネ」 「おう、お久ー」 「あ、こんにちは」 少女が丁寧にお辞儀するのを見て、鈴はニヤニヤ顔で浪に近寄ってきた。 「あららー…浪さん、また若い女の子に出たしたアルか〜。憎いアルねぇ、この女の敵!」 バン! 突然、背中を強打される浪、それも何度も。 メンバーの中では戦闘力の高い一人だが、痛いものは痛い。慌てて鈴と距離を取る。 「待て、誤解だって!」 「ゴカイもロッカイもないアルよ」 「……ベタベタ。てか、娘だよ、娘。娘の空。知らなかったか?」 確か伝えた筈だが……といぶかしむと、鈴は顔を横に振った。 「知ってるアルよ。ただ、事実を言っただけアル。女の敵」 「なんて理不尽!?しかも、敵って……ん、どうした、空。顔、怖いぞ?」 ふと娘の方を振り向いた浪の視線の先には、険しい顔をしてジーと浪を見つめ……もとい、睨みつける空の姿があった。そして低い声で、 「……まだ、女の人に手出してるんだ?」 なんて言うものだから、鈴も浪もちょっと後ずさりしてしまう。 が、其処は父親。慌てて空に近寄ると、ガシッと両肩を掴んで、顔を近づけた。 「いや違う!見ろ、俺の目を。俺の目が嘘をついてないと語っている筈だ!」 「よ、よく分からないけど……本当だよね?また女の人追っかけてたりしてないよね?」 「あぁ、勿論さ!」 気迫に飲まれただけか、あるいは父親を信じたいと思う心か。 父親と娘のなんだか微笑ましそうな光景がそこにはあった。 と、その背後で再びガラガラと扉が開く。入ってきたのは遥と、妹の翼である。 「あ、浪さーん。お久しぶりですねー」 「よっ」 「翼、遥さん、こんにちわ」 「こんにちは」 遥、翼、浪、空がそれぞれ挨拶をする。 実は、翼と空は元々、同じ高校に通う友達同士だったのだ。 ただし、肉親を妖怪だと知っているのは空だけだが。 「こんにちは、空ちゃん……あ、そうそう。浪さん」 「ん?」 「最近、どうしてお食事誘ってくれないんですか?高校の時はよく連れてってくれたじゃないですか」 「……え?」 「あー……あれはだな」 空の聞いた事のない話である。 なんだか、しどろもどろになる浪の態度もなんだか怪しい。 気が付くと、浪を見る翼の目が……冷たい。 「それにミーアさんも最近、神社来ないから寂しそうでしたよー」 「……えーと」 どんどん喋る遥に対し、どんどん顔が強張っていく浪。 翼の視線の鋭さもどんどん増していくようだ。 「そうそう、楠葉ちゃんとも連絡取ってますかー? でも今は受験中ですから、前みたいにあんまりしつこいと怒られますよー」 「………」 遥だけはニコニコしているが、翼は睨みつけるのに近いし、浪の顔もなんかおかしい。 そして何より、浪は傍から巨大化していくプレッシャーを感じていた。 ギリギリ……と半笑いの表情で、空の方を向く。 空は笑顔だった。が、なんだか凄く、浪はその笑顔が恐ろしいと思った。 |
妖怪ネットワーク「満闇」(みつやみ)
- ネットワークの管理者…大羽住一郎
- たまり場…満闇神社
- 規模…中規模
御津瞑市を拠点とする妖怪ネットワークであり、人間に対しては友好的。
戦後、ある凄惨な事件によって、その力を大きく失った大天狗・住一郎は、再び同じ様な悲劇が起きないようにしなければならないと考え、妖怪の教育と彼らの暴走を防ぐ事を目的としてこのネットワークを設立しました。
若い妖怪達が人間社会でちゃんと生きていけるようになるまでの面倒を見る代わりに、彼らには近辺で起こる怪事件を手伝ってもらいます。ですが、決して強制する事はありません。彼らが自発的に人間を助ける様になるのが目標なのです。
御津瞑市(みつやみし)
関東地方、東京都内のベッドタウン。
元々は満闇市という名前だったが、縁起が悪いのでこちらに改名。
開発は進んでいるが、昔そのままの部分も多い。動物園も植物園も美術館も博物館も神社もあり、意外と観光名所揃いなので休日には人気。
住宅街と繁華街の間が川でちょうど区切られています。
満闇神社(たまり場)
御津瞑市未開発地区に設定されている山の上に昔からある神社で、この地域の中心ネットワーク《満闇》の拠点となる場所です。
「縁切りの剣」を御神体として奉っており、秋祭りでは天狗の面を付けた神主がみこしや神楽奏者を引き連れて家々を回ります。また、御神体の剣は悪霊を祓い、悪縁を斬る力がある、とされています。
観光客が大挙して訪れるような大きな神社ではありませんが、あらゆる悪縁を断ち切るご利益があるとされ、人間関係に困っている人やタバコ、賭け事などの切りたい縁を持つ人々が参拝に訪れます。
ときおり「怪事件との関わり」という悪縁を持ってしまった者がやってくることもあります。
そういった時に、PC達が人知れず事件の対処に尽力する事となります。
神主の大羽住一朗は、この地を守護する天狗です。
強大にして多彩な力を持っていた彼は、古(いにしえ)よりこの地に住まう人々を守り続けてきたました。現在は名が廃れた事や御神体の再封印のために、以前ほどの力はありませんが、それでもこの地を思う気持ちに変わりはありません。
また人間としてもこの地域の顔役であり、さまざまな人脈があります。知り合いの企業の重役、警察の幹部、国会議員などから相談を受けることもあるようです。
また、神社のある遠野原山(とおのはらやま)はそのほとんどを住一朗が所有しており、人間に関わらず暮らそうとする妖怪のために未開発のまま残してあります。
中華飯店「栄春軒」(サミルのバイト先)
繁華街のメインストリートの裏手に建つ小さなお店で、中華料理屋というよりは中華料理も出す定食屋です。あまり目立たないお店ですが、悪くない味(ただし辛いものばかり)と安い値段設定のおかげで、学生や地元の人たちには受けはいいようです。
店主の柳川大輔は人間ですが、妖怪に関して理解があり、また生来の気前の良さでいつも金欠の妖怪たちにわずかな金額で食事をご馳走してくれます。そのため経営の方は常に赤字スレスレです。
この店のウエイトレスを勤める彼の義娘は僵尸(キョンシー)と呼ばれる妖怪です。
最近の目玉商品は「冷やしパンダ(サミル作)」。別にパンダを出してる訳ではありません。
古室探偵事務所(田村幸平、天宮の就職先)
古今東西の推理小説に登場する「名探偵」のイメージが妖怪化した古室奢碌(しゃろく)が経営する探偵事務所。
彼の探偵としての能力はかなりのものなのですが、依頼内容を非常に選り好みするためほとんど儲かっていません。
おかげで助手である田村(探検道具の付喪神)への給料も相当量未払いのようです。
また、奢碌は記憶力がいい反面、管理能力は酷いもので、部屋の中は未整理状態の資料でごっちゃごちゃです。
時々、遥が手伝いに来たりしますが、おっちょこちょいなので余計にひどい有様となっていきます。
最近、田村に加えて、天宮(蛇神)という新たな探偵助手を雇用。
ちなみに天宮は奢碌と直にあったことがないらしい……
アンティークショップ「GENTLE-MAN」(知人の店)
現代の街中にひっそりと佇む洋風のお店。
満闇市の繁華街に目立つ訳でもなく、しかし隠れもせずに佇んでいる古風な店がある。
それが「GENTLE−MAN」である。
この店は、実は妖怪ネットワークとは直接の関係はない。
しかし、妙に紳士的な店主と、彼の集める変わった品々は、何故か妖怪に関連する物が多かった……。
最近、店主の名前がジェントル鈴木という事実が発覚。
さらに新たな同居人として、甥である盲目の高校生・紅宮祐介と、彼を溺愛する義姉・紅宮佳夜奈(バジリスク)が加わった。
ドイツ料理店「シュバルトヴァルト」(アストリアの家兼店)
住宅街に立つ清里蒼也(アストリア)と妻の美琴が経営する大衆向け料理店。
たびたび休業するものの、親しみやすい雰囲気の店内が人気を呼び、それなりに賑わっています。ちなみに調理はアストリア、接客は美琴が担当しています。
現在は清里少尉と火倶土という新たな住人が入ったため、人手は足りたが、お金は無きにしも非ずという状況……かもしれない。